パンダ組の日常

~だんご三兄妹をめぐるカオスな日常~

バレンタイン、燃ゆ

世の男性が理由も無くソワつくバレンタイン

自分には関係ないと思いながらもつい何かを期待してしまうバレンタイン

 

 

その日の朝は私も少しソワソワしていました

別にチョコレートが欲しかったワケじゃないんです

いやね、子供達がチョコ大好きだから

そんな子供達に合法的にチョコをたらふく食わせてやれるイベント

それがバレンタイン

ほんとそんな位置づけです、僕にとってのバレンタインなんて

ウソじゃありません

 

 

貰ったんだからしょうがない

オマエ達も食べるの手伝ってくれよ~

いやぁ父さん職場でモテモテだからさ~

将来父さんみたいにたくさんもらえる男になれよ~

 

 

そんなこと言いながらね

子供達から尊敬と感謝の眼差しを浴びて甘いチョコを頬張るっていうね

 

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さて職場に到着

午前中は外来です

さっそく70歳過ぎのマダムから箱入りのチョコを戴きます

 

うんうん、いい調子だ

このままいくと一年分のチョコレート備蓄できちゃうかもね

 

 

しかしあとが続きませんでした

午前中の収穫はこの1個のみ

少し焦りを覚えて午後の病棟回診に臨みました

 

 

いつもならサラッと見回ってサッサと次に行っちゃうのですが、この日ばかりは違います

用も無いのにナースステーションをウロチョロしては看護師さんの方をチラチラ

 

ほら、僕はここにいるよ~

今なら時間ありますよ~

 

 

だけどみんな忙しそうに働いています

僕の熱視線は完全無視です

 

 

嫌な予感を抱きながら次の病棟に向かいました

 

 

案の定、業務連絡以外で話しかけてくる女性は皆無でした

 

 

へーそうなんだ

この病院はそういう感じなんだ

変な風習に踊らされない風習っていうやつね

そういうのもいいかもね

ホワイトデーのお返し考えなくてもいいしね

こっちとしても大助かりですよまったく

 

 

今朝リュックサックで来なくてよかった・・・・

いつものポッシェにしといてホントよかった・・・・

 

 

 

今年のバレンタインは人生でワーストのチョコ獲得数でした

でもいいんです、どうせ義理だし

家に帰ればちゃんと本命が用意されてるの知ってるし

昨日の夜何やら嫁さんがゴソゴソ用意してたの知ってるし

 

 

逃げるように職場を後にした私は、もらったチョコを一つだけ握りしめて家路を急ぎました

一つだけぶら提げたチョコ入りの紙袋がもの悲しさを引き立てます

 

 

リュックサックで来なくてホントよかった・・・・・

 

 

 

家について玄関のピンポンを押すと嫁さんが扉を開けてくれました

開口一番嫁さんが言いました

 

・・・・ごめん、失敗した

 

 

なにが?

 

 

チョコレートクッキー作ったんだけど・・・・完全に失敗

 

 

お皿には嫁さんがクッキーと言い張る石炭みたいな塊が三つ乗っかっていました

たくさん作ったけど、この三個以外はすべて燃え尽きてしまったとのことです

かろうじて救出できたこの子達も果たしてクッキーと呼んでいいものかどうか

 

挑発的に黒光りする三つの塊を見て僕はしばし考え込みました

 

 

この黒はチョコレートの黒?それともお焦げの黒かしら??

 

その時、唐突に嫁が言いました

 

 

良かったら食べてみる?・・・別に捨ててくれてもいいけど

 

 

 

 

・・・・・・・食べるっていう選択肢あるの??

しかもその言い方、ちょっとツンデレっぽいんですけど!?

 

 

そこまで言われて食べないなんて日本男児失格だ

 

 

おう、食べてやろーじゃないの!

 

 

僕は石炭を三つ掴んで一気に口に放り込みました

もはや気分は機関車トーマスです

 

 

悪い方の想像を裏切らない風味に一日の疲れがどっと噴き出しました

 

 

 

あぁ・・・そういえばクッキーって炭水化物だったっけな・・・・

 

・・・・・・・

 

炭水化物って言葉、最初に考えた人滅茶苦茶ネーミングセンスいいよな・・・・

 

 

燃え尽きる寸前のクッキーを頬張りながらそんなことをボーっと考えていた、とあるバレンタインの夕刻 

 

 

そんな、そんな一日でした