ラーメンはわりと好きな方であるが、つけ麺というジャンルにはさほど興味が無かった。
しかし数年前に三田製麵所というラーメン屋で初めて食べて以来、つけ麺もそこそこ好きだということに気が付いた。
とは言え職場が変わって三田製麵所から足が遠のいた途端、つけ麺自体を全く食べなくなっていたのだが。
それが先日、ふとしたことから猛烈につけ麺が食べたくなったのだ。
だけどせっかくの休日、子供たちをおいて一人で食べに行くのもなんか違う。
・・・・・よし、それなら作っちゃいますか
例の如く、一旦火が付くともはや暴走機関車のようにブレーキが効かなくなる父。
早速全員を引き連れて買い出しへと出発。
スーパーに到着すると、手分けしてつけ麺作りに必要な素材を物色する。
その時、既に父の頭の中ではある程度の青写真が出来上がっていた。
ベースは得意の鶏がらスープでいけるハズ
麺はできる限り極太のストレート麺
半熟卵は作るとして、あとはメンマとネギと・・・・魔法の粉
魔法の粉さえあればなんとかなるって、きっと
いつものように鶏がらを探すが、運の悪いことにその日は5羽分しか置いていなかった。
今回はかなり濃厚なスープにしたかったから最低でも6、7羽は使いたかったのに。
仕方がないので置いてある分だけ購入し、あとで別のスーパーを覘いてみることにして他の食材を探す。
思い通りの極太ストレート麺には出会えず、泣く泣く一番太めの縮れ麺で妥協。
メンマは特にこだわりなし、と。
さて、残るは魔法の粉・・・・・
別行動で獲物を探していた嫁さんが私のところに報告に来る。
「ボス、魚粉なんて置いてませんぜ」
そう、魔法の粉の正体とは魚粉のことなのだ。
どの店のつけ麺でも使われているのかは知らないが、少なくとも三田製麺所ではスープに浮かべた海苔の上に魚粉がコンモリと盛られている。
魚粉の強い匂いはかなりのパンチ力を有しているため、これを入れることで店と家のスープの細かい違いなんて吹き飛ばしてくれるはず、と踏んだのだ。
だのに魚粉が置いてないだなんて・・・・
しかたなくスマホでピピッと調べてみたらなんのことはない、業務用の混合削りぶしをミルサーで粉状にすればよいとのこと。
なんだよ、心配させやがって・・・・
ということで適当にそこらへんの削りぶしを購入。
帰りにもう一軒別のスーパーに寄ってさらに2羽分の鶏がらを追加。
家に着くと早速スープづくりを開始する。
流石に7羽分ともなると下処理が少々キツい。
台所用の大鋏を片手に、一人孤独に戦う父。
嫁さんは自分の出番が来るまでしばし休息。
鶏がらに残った内臓を処理し、骨をバキバキに折って香味野菜を放り込む。
ここまでくれば後は煮込むだけ。
圧力鍋なのに構わずギリギリまで水を入れて煮込む。
爆発したらゴメンナサイ。
圧力をかけて煮込むこと小一時間。
7羽分の鶏がらが入ってるだけあって、なかなかに濃厚な色合い。
ここからさらにゴマスリ棒で底に沈んだ骨を叩き割っていく。
さて、ここでいよいよ魚粉作り。
今回のつけ麺の成否はこの魔法の粉にかかっていると言っても過言ではない。
先ほど購入した業務用削りぶしに加え、おやつ用の煮干しなどを適当に放り込んでミルサーにかける。
こんなんでいいのだろうか・・・
さすがに一抹の不安を覚えるが、もはや「今日の晩飯はつけ麺!!」と豪語して皆の期待を一身に背負ってしまったため後戻りはできない。
あとは野となれ山となれ、だ。
スーパーでついでに購入した鶏皮とせせり。
晩酌のつまみに、これらで鶏皮せんべいとせせりの唐揚げを作る(写真撮り忘れ)。
さて、いよいよつけ麺の命であるスープ。
さきほど煮込んだ鶏がらスープに市販の鶏がらの素を少々加え、塩・醤油・ナンプラー・昆布茶で味を調える。
最後に魔法の粉と擦りゴマ、一味唐辛子をドサッと投入。
何とも雑然とした盛り付けではあるが、見ようによってはそれらしくも見える。
しかし見た目などどうでもよい。
旨くなければ何の意味もない。
さて、それではいよいよ実食。
太麺を箸ですくい上げ、豪快にスープに潜らせて一気に口の中へ。
うっ・・・・・うまい!!!
こいつは久々にグレイテストヒットだ。
こちらの思惑通り魚粉がとてつもなくいい働きをしている。
もはや外で食べるつけ麺と比べてなんの遜色もない。
正直なところ、ベースのスープなんて何だっていいのかもしれない。
すべては魚粉で誤魔化せる。
いちいち鶏がらでスープを取るのが面倒なら、市販の鶏がら粉末を使っても何の問題も無さそう。
ただし鶏がらを煮込んで取ったスープはコラーゲンたっぷりだからかなんなのか、トロっとした粘性を持つため麺にスープがよく絡む。
やはり少々手間でもスープから作ることがお勧めだ。
子供たちもウマいウマいと目の色を変えて食べてくれた。
それが何より嬉しかったりする。
これからしばらくの間、我が家ではつけ麺がブームになりそうな予感だ。