パンダ組の日常

~だんご三兄妹をめぐるカオスな日常~

アビガンの報道に感じた違和感

今日は真面目に書いてみる。

 

 

最近よく耳にするアビガンのニュース。

特に有名人がアビガンを内服して退院したケース。

まるで「アビガンを飲んだから熱が下がりました」みたいな書き方に違和感がもの凄い。

 

実際のとこはどうなんだろうか。

アビガンが効いたのかもしれないし、飲んでなくても自然に解熱するタイミングだったのかもしれない。

でもあの書き方だと「アビガンが熱を下げた」「アビガンを飲んでなければ死んでたかもしれない」とでも言わんばかり。

 

マスコミさん相変わらず煽ってるね~、と。

 

 

だけど世間もようやくこの手の報道に耐性がついてきたのではなかろうか。

マスクに始まりトイレットペーパーやらゴーグルやら石鹸やらスパゲッティやら。

マスコミに散々踊らされた結果、店頭から姿を消した商品の多いこと多いこと。

そしてそろそろマスコミの書いてることが必ずしも真実ではないこと、ウソではないにしろ相当誇張されてる可能性があることに気付き始めた頃。

少なくとも私は今、そんな感じだ。

 

 

そして今回のアビガン。

私は医者のはしくれだから、少なくともアビガンのニュースにはかなりの違和感をもって反応してしまった。

 

アビガンを内服したから熱が下がりました、と言い切るにはそれなりの根拠が必要だ。

本来ならばRCT(ランダム化比較試験)と呼ばれる方法、具体的にはアビガンを飲む群と飲まない群を無作為に割り付けて発熱の期間や回復した人数を比較検討する、といった研究が必要となる。

そしてもちろんアビガンにはまだそのようなデータは無い(はず)。

 

だからってべつにアビガンはコロナに効かないだろう、と言ってるわけじゃない。

効くかもしれないし、言うほど効かないかもしれない。

わからないのだ。

なのに「アビガンを飲んだら熱が下がりました」という断定的な物言いは誤解を与えるんじゃない?と言ってるわけ。

例え本人たちがそう感じてそう表現したとしても、それをそのまま注釈もつけずに報道するのはどうやねんと。

なんかもうコロナ関連のニュース読むのやめよっかなって本気で考えてしまった。

 

 

じゃ、アビガンは本当に効くのかどうか。

自己複製に関与するRNAポリメラーゼと呼ばれる物質を阻害することでウィルスの増殖を抑える、これがアビガンの作用メカニズムらしい。

これはあくまで個人的な意見ではあるけれど、作用機序を見る限りある程度の効果はあるんじゃなかろうかと。

例えインフルエンザに対して開発された薬とはいえ、同じRNAウィルスというグループに属するコロナであれば効果があったとしても不思議はない。

 

 

ウィルスが増えるのを抑える薬なんだから当然、ウィルスが増えきってしまう前、すなわち感染の初期に投与すればより効果的なのだろう。

実際、高齢者やハイリスク患者では入院初期の投与が推奨されているようだ。

だけどハイリスク群には該当しないような症例でも急に重症化する場合があるようで。

要はアビガン内服を希望する患者にはとにかく早めの投与が基本、ということだろう。

 

 

待てよ・・・・・

 

今の状況でどうやって感染初期に投与するわけよ

 

 

言うのは簡単だけど、体に変調を来してから実際にPCRで感染を確認するまでに何日かかるのか。

今の医療体制ではおそらく1週間程度はかかるだろう。

もちろんPCR検査をやってもらうという比較的高いハードルをクリアできたと仮定して。

これって感染初期と言えるのかどうか。

 

現実的にはもともと別の病気で入院している患者がコロナに感染する、いわゆる院内感染のケースでしか迅速な投与は難しいのではなかろうか。

 

 

結局何が言いたかったのかというと、誰もが安易に投与してもらえるでわけもないし明確なエビデンスも無い薬なのに、あたかも魔法の薬ですみたいに堂々と報道するのはいかがなものかってこと。

 

もし私に医学の知識がなければ、「あ、そんないい薬があるんじゃん」って考えてコロナに対する警戒心を緩めていたかもしれない。

 

 

 

新型コロナ感染症は天災みたいなもんだけど、コロナ禍ってほぼ人災なんじゃねーの??って思いがますます深まってきた今日この頃。