パンダ組の日常

~だんご三兄妹をめぐるカオスな日常~

正月明けで鬱気味のあなたへ ~或る絵本作家の苦悩~

だめだ、もう疲れたわ

そろそろ医者は廃業だ

なんつってもリスクが高すぎる

オレはノーリスクハイリターンじゃなきゃ嫌なんだ

 

次の仕事はすでに決めてある

絵本作家だ

人気絵本作家

オレにはもうこれしかない

幸いオレには幼子が三人もいる

だからいわゆる「子供たちが好きそうな話」には精通している

子供たちの心をワシづかみにして離さない刺激的なストーリー展開

それにジャストフィットした緻密なタッチの挿絵

 

 

あっ・・・・・・絵が描けないんだった

すっかり忘れてました

 

ならば男らしくスッパリと絵本作家は諦めよう

絵本作家の絵じゃない方担当の人、これでいこう

 

物語の構想はすでに練ってある

だって世の中参考になる素晴らしい作品で溢れ返っているから

いや、決してパクッたわけじゃない

あくまで参考程度、だ

 

 

まずご紹介したいのがコレ

私の処女作「ずりとヅラ」

小さい頃大好きだった「ぐりとぐら」から着想を得た作品だ

 

内容はいたってオーソドックス

擬人化した砂ずり君とカツラちゃんの冒険を描いた長編だ

原作はカステラ焼いてたけど、こっちなんて最後砂ずり焼くからね

それをヅラが食べる

子供たちが夢中で食いつくこと間違いなし

シリーズ化する予定だからこの先いくらでも引っ張れる

オレの代表作になるハズだ

 

 

あっ・・・・ズリ君食べられてるからシリーズ化できんわ

再考の余地あり、と

 

 

お次は今でもお気に入りの小説「星の王子様」

これを手本に書き下ろしたのが「放心のおじ様」

ギャンブルで家も家族もすべて失った哀れな中年を描いた作品だ

 

このおじ様、作中至るところで名言を吐く

普通、辛酸を舐めた人間の言葉にはそれなりに重みがあるものだ

だけどそれを冴えない中年が言うもんだからなんの説得力もない

そういう「ダサかっこ悪い中年」を表現してみたのだ

 

ふと思ったけど「ダサかっこ悪い」って救いようのない言葉だな

しかもダサくてカッコ悪いのは当たり前のことだしな

けど書いててあまり産みの苦しみが無かったってことは・・・・・

 

まさかオレと被ってるから!?

 

ま、そんなことはどうでもいい

こいつはどちらかと言えば大人向けの作品だが、早い内に読んでおいて損はない

人生の厳しさを知るという意味で児童推薦図書に指定される可能性も大いにある

 

 

この際だからサスペンスにもチャレンジしてみたい

もはや絵本作家から離れてるけど

こちらもすでに大筋は出来上がっている

自分の中に28もの別人格を宿した多重人格者の苦悩を描いたサスペンス

その名も「別人28号」

 

これはまぁ、色々パクったと誤解されるかもしれない

でもパクってませんから

 

 

 

やばい、アイデアが溢れてくる

まるでコンコンと湧き出る泉のようだ

まさかこのオレにこんな隠れた才能があったとは

あとはもうイラストレーターを探すだけだ

オレの作品たちに命を吹き込んでくれる優秀なイラストレーターを

そしたらもうミリオンセラー連発も夢じゃないわ

もしそうなったら田舎に移住して毎日パンを焼いて暮らそう

 

毎日毎日朝から晩までパンを焼いては食べて焼いては食べて余ったらご近所に配って代りに玄米四合と味噌と少しの野菜をもらったりしながら気付いたらパンの食べ過ぎで病気になっててそれでも糖尿ニモ負ケズとか言って家族みんなで細々と生きていこう・・・・・

 

 

 

 

 

よし

 

なんか元気出てきたわ

 

正月明けなんて誰でもこんなもんでしょ

 

 

はい妄想終了

 

 

 

 

明日からまた全力でいく