パンダ組の日常

~だんご三兄妹をめぐるカオスな日常~

アトピー性皮膚炎に新薬・・・デュピクセント

※この記事はマニアックかつ長文です。興味がないのに誤って迷い込んでしまわれた場合、スターを3つほど押して引き返されることを強くお勧めいたします。

 

 

全ての病名を知ってる医者なんてこの世に存在しないだろう。

それくらい世の中には病気がゴマンとある。

 

そんな中でアトピー性皮膚炎はかなりメジャーな疾患である。

ほとんどの人はこの病気を知っているし、実際にこの病気を患っている身内や友人が一人や二人はいるはずだ。

 

星の数ほどある病気の中で、私はこのアトピーというやつがとりわけ嫌いなのだ。

医者としてではない。

この病気を抱える身内を持つ一人の人間として。

 

 

命までは取られないじゃないか、と軽く考える人がいるかもしれないが、本当に重症のアトピーは想像以上にタチが悪い。

 

食欲低下から体は痩せ細り、免疫系が攪乱されるのかなんなのか微熱が延々と続く。

痒みによる寝不足で意識は朦朧とするが、朦朧としても痒みだけはしっかり自覚する。

掻き続けることで皮膚はごわつき、バリア機能の破綻した皮膚は乾燥してさらなる痒みを引き起こす。弱った皮膚は感染も起こしやすい。

 

これを繰り返すことで体は衰弱の一途を辿ることになる。

 

 

そしてなによりも、この一連の悪循環によってもたらされる心理的なダメージが大きい。

一度この悪循環に嵌ってしまうと、治療を続けてもなかなか出口が見えてこない。

出口は見えないくせに、日に日に悪くなっていく皮膚だけはしっかりと目に見えてしまう。

 

もはや何かを頑張ろうとする体力も気力も削ぎ落してしまうのだ、このアトピーというヤツは。

命は奪わないにしても、人生を180度変えてしまう破壊力は十分である。

 

もちろんこの状態で仕事や学業を頑張っている方もおられるため、あくまで私見ではあるのだが・・・

 

 

何を隠そう、私にもアトピーの素因がある。

とは言え、幸いなことに通常は全くと言ってよいほど症状が無い。

中年汁という最強の保湿成分に守られたお肌はいつだってテカテカのツルツルだ。

 

しかし数年に一度、何かをキッカケにブワッと皮疹が出ることがある。

この時はかなり強力なステロイド外用薬のお世話にならなければいけないほど。

いつも短期間でキレイさっぱり治ってくれるからいいのだが、いつこれが慢性化、重症化しないとも限らない。

成人型アトピーを発症する可能性は誰にだってあるのだ。

 

 

さて、ここにきて画期的な新薬が登場したという情報を耳にした。

これまでの標準的治療といえばステロイドの外用やその他の免疫抑制剤の併用、そして保湿である。

しかし今回、重症アトピーにおいて標準的治療はそのままに、この新薬を上乗せすることでかなりの奏効率が見込めるというのだ。

 

 

・・・・・ほんまかいな

 

 

私は皮膚科医ではないので、アトピー性皮膚炎は全くの畑違いである。

当然この新薬の存在すら知らなかった。

 

何が言いたいのかというと、今から書くことはあくまで新しい治療薬を待ちわびていた一患者の家族が自分で勝手に調べただけのものなので一切の責任を負いかねますよ、間違ってたらゴメンナサイネってこと。

そこんとこよろしくお願いします。

 

 

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その薬は一般名”デュピルマブ”、商品名を”デュピクセント”というらしい。

2018年4月に販売が開始されたホヤホヤの新薬。

小難しい話は抜きにして、”マブ”と付くわけだから今流行りのモノクローナル抗体を用いた分子標的薬であることがわかる。

 

結構小難しいなコレ・・・・・

 

では一体何を標的にした薬なのか。

アトピー性皮膚炎に深く関与すると言われているIL-4やIL-13(IL:インターロイキン)といったサイトカインの受容体をターゲットとし、そのシグナル伝達を阻害することで炎症を抑える薬らしい。

 

やっぱ結構難しいなコレ・・・・・

 

 

ものすごく大まかに書くと「イタチの最後っ屁」みたいなもんだ。

 

追い詰められたイタチが臭い屁をこいて敵を困らせるという秘奥義。

我々の体も日々、これと同じようなことが行われている。

 

侵入者に対して白血球の一種がサイトカインと呼ばれる最後っ屁をかます

屁は体内を漂い、このニオイを嗅ぎ分けることができるある種の細胞に戦いの準備を促す。

 

アトピーではIL-4やIL-13と呼ばれる種類の屁がこかれるのだが、その屁の量が半端なく多い。

そして臭い。

さらに厄介なことに、アトピーという病気になると敵がいようがいまいがお構いなし、延々と屁をこき続けるわけだ。

 

するとこの強烈なニオイを嗅ぎ取った細胞たちが暴走して炎症が悪化する。

 

そこでデュピクセントの出番である。

体内を漂う屁が他の細胞に嗅ぎ取られないよう、デュピクセントは鼻栓の役目を果たす。

予めIL-4やIL-13という種類の屁の臭いに敏感な細胞の鼻の穴に入り込み、栓をすることでニオイに気付かなくしてしまえ、というわけである。

 

 

例えになってるのか、コレ・・・

 

 

ま、そういうことである。

 

アトピー性皮膚炎とは、アレルギーの元になる何らかの物質にある種の白血球が過剰に反応した結果、次々と他の細胞を巻き込んで皮膚に無用の炎症が引き起こされる疾患である。

 

そしてこのデュピクセントという新薬は、暴走した白血球が他の細胞を巻き込まない様に先回りして、その伝達経路をブロックしてしまう作用を持つ薬なのだ。

 

 屁はこけど、臭わず

 

一言でいうとそんな薬。

 

このことからも、デュピクセントがアトピーに対する根治的な薬物ではないことがわかる。

だって屁はこくわけだから。

そもそも屁をこかなくする薬は今のところ無い(はず)。

 

根治的ではないにも関わらずこの薬が優れていると言われる所以は、かなり強力に、かつ迅速に皮膚症状(痒みや発赤)を取り除くところにあるらしい。

 

痒みがなくなれば掻かなくなる

掻かなくなれば皮膚は正常な構造を取り戻す

皮膚が正常な構造を取り戻せばますます痒みがなくなる

 

負の連鎖が断ち切られるわけだ。

 

さらには強力に痒みをとることで、数か月使い続ける内にゴワついていた皮膚が目立たなくなってくるという(程度に個人差はあるだろうが)。

これも掻く、という機械的刺激が無くなることによる効果だろう。

ビジュアル面でも恩恵があるというのはかなり重要なファクターだ。

 

 

このように一見いいことずくめの薬ではあるが、もちろんデメリットもある。

何よりもまず薬価が高い。

2週間に一度皮下注射するわけだが、1か月で5万円弱という高価な薬である。

半月に一度病院に通わなければならないという時間的な制約もある。

この種の薬にしては重篤な副作用があまり報告されていないようであるが、いかんせん新薬であるため、今後何か新しい事実が報告される可能性もある。

 

さらにこの薬は誰でも使えるわけではない。

15歳以上、かつ医師によって重症のアトピーであると診断された患者だけに適応が認められている。

またこの薬を始めたからといって、今までのオーソドックスな治療(ステロイド外用等)からすぐに卒業できるわけでもない。

あくまでも現時点では従来の治療の補助的な位置づけである。

 

薬のやめ時も不明だ。

根治療法ではないため、果たしてやめることができるのか、やめられるとすればいつごろなのか、そのあたりのことはまだ明確にされていない。

 

しかしそういった不明瞭な点を差し引いても、やはりアトピーの治療に関して画期的な薬剤であることに変わりはなさそうだ。

 

 

 

長くなってしまったが、アトピーの新薬に関して小耳に挟んだ情報をつらつらと書いてみた。

幸い私の身内は今すぐこの薬を使わなければならないほど重症ではないのだが、万が一の時には選択肢の一つとして積極的に検討したい。

 

そしてまた遺伝的素因十分の我が子達にとって、将来このような薬が次々と登場するであろうことは何とも心強い限りである。