先日、地震の関係で少しだけ仕事を早退したんです。
そしていつもよりちょっと早め(とは言っても夕暮れ時)に子供達を迎えに行きました。
全員回収して小雨のパラつく中やっとこさ家に辿り着きワンちゃんの粗相の処理をしてついでに末っ子の粗相の処理をして暴れ回るガキどもを順番に風呂に放り込んで自分も風呂に入ってパジャマに着替えさせて・・・・・
やっと終わった~嫁が帰ってくるまで一息つこう、とソファーに腰を下ろしました。
ちなみにその日は、父よりも母の方が帰りの遅い日です。
読書好きの長男は早速ソファーに座って本を読み始めました。
長女と次女はリビングの横の和室で仲良く寝転がっています。
手持無沙汰の父は誰か遊んでくれないかな~と長男をチラ見、当然シカトです。
そこで標的を長女と次女に定め、ジワリジワリと和室に近付いて行きました。
すると向かってくるオヤジにイチ早く気付いた次女@2歳が、寝そべったまま優しく微笑んででこう言いました。
「アッチニイケィ」
・・・・・おもしろい、ヤル気ですか?
本当はホンのちょっとだけ傷ついたんですが、大人の余裕で表情には出しません。
そのかわり戒めの意味を込めて本気のかくれんぼを見せてやろーじゃないの、と鼻息も荒くまくしたててやりました。
「今アッチイケって言ったね、あーそうですかそうですか人の気も知らないでよく言いましたね、長女オマエも横で笑ってるってことはアッチイケって思ってるわけね残念だわーお父さんすごく残念、長男お前はずっとシカトしてるしね、わかりました出ていきますよ、お母さん帰ってくるまでお前たち3人で留守番になるけどいいんやね、そんじゃーねーばいばーい」
早口に言うだけ言ってリビングを飛び出しました。長女は後ろで「行ったらあかん!!」と叫んでいますがもう止まりません。賽は投げられたのです。
出るときにドアを閉めておけば、それだけで長女と次女の軽い足止めになります。簡単にドアを開けることができる長男はハナから見向きもしていません。
廊下を足早に進み、そんなに広くない家の中で唯一物置きと化している部屋に飛び込むと、そこのドアも閉めて一番奥の壁と段ボールとキャリーバッグでできた小さな隙間に三角座りです。部屋の電気をつけていないため、夕暮れ時の薄暗がりの中で息を潜めていれば意外と見つからない雰囲気です。
さあ、狂ったように長女と次女が探しに来るぞ~、特に長女は怖がり屋さんのビビり屋さんだからなぁ・・・・・むふ、むふふふふふ・・・お父さんこういうの大好き!
ドキドキしながら息を殺して10秒経過・・・20秒・・・・30秒・・・・・1分・・・・・あれ?おかしい・・・いつもなら決死の捜索隊を結成して恐る恐るドアを開けに来るタイミングなのに。
じーっと耳を澄ますと、リビングの方から何やら楽しそうにおしゃべりしている声が・・・・・しかもテレビの音まで混じってるし・・・・。
えっ、もしかして楽しんでる?
お父さんナシで??
しかも勝手にテレビつけたの???
天岩戸に隠れた天照大神ってこんな気持ちだったんでしょうか・・・・・
しかしここまで来たらもう引き下がるわけにはいきません。なによりどの面を下げてノコノコ出ていけばいいのかわかりません。
こうなったら持久戦、行くとこまで行ってやろうじゃないの
意を決した父は暗い部屋の中、壁と段ボールとキャリーバッグに挟まれて三角座りで一点凝視・・・・・事情を知らない人が見たら完全にアブナイ中年です。
そろそろ書くのが面倒臭くなってきたのでハショリます。
結論から申し上げますと5分が限界でした。
せっかく早退して帰ったのに、子供達と遊ぶでもなく夕飯の準備をするでもなく暗い部屋で一人三角座り・・・・この行為に1ミリの生産性も無いことに5分で気付いた私はオトナの部類ではないでしょうか。
あとはこの戦いをどのように終わらせるか、その一点だけです。
しかしもうすべてが面倒になっていた私には特に良い案も浮かばず、手っ取り早くリビングに届くほどの大きな奇声を発してみることにしました。
「ウホホホーーーーイヒヒンヌ」
リビングの会話が一瞬止まります。これはイケるかもしれません。
案の定リビングから長女の声。
「あっ、お父さん家の中にいる!!」
どうやら本当に外に出て行ったと思っていたようです。
そんなことするわけないでしょーが!ほら、早く早く!!
やっと本腰を上げた長女と次女が父を救出してくれたのは、それから間もなくのことです。
二人に両手を引っ張られてようやく暗い穴ぐらから出てきた私は、まるで迷子になった子供が迎えに来た親に「お~そ~い~」と甘えるように二人をナジリました。
リビングに入ると、さすがにバツの悪そうな長男がテレビを見ています。
不義理を問い詰めてやると、ニヤッと笑って「だって天テレ(天才テレビ君)見たかったんやもん」ですってさ。
子供達が親の後を追わなくなるのもそう遠い未来ではない、ということに気付いてしまったとある梅雨の夕暮れです。