諸々の事情により急遽、GWの初っ端に嫁さんの実家である〇✕県へと帰省することになった。
想定外の帰省であったため、往路フェリー帰路車という定番のパターンが崩れ(フェリーの予約が取れず)、不本意ながら飛行機andレンタカーでの帰省に。
飛行機大嫌いなのに・・・
しかも〇✕県直行の飛行機は満席であったため、行きも帰りも隣県の空港という苦行のような旅程。
さて当日、仕事を早めに切り上げていざ空港へ。
搭乗手続きを終えると保安検査まで残り40分。
それまでに晩御飯を食べてしまわねばならない。
しかしパンダ組には尋常じゃなく食の進まない不動のツートップが・・・
そう、長女と次女である。
コイツらのことを考えればなるべくサラリと食べられるうどんか何かが良い・・・
しかし時は夕刻、しかも5人連れという中途半端な大家族がおいそれと入れる店は少ない。
贅沢は言ってられんわい、と適当に空いてそうな店に入ったのがハンバーグ屋さんであった。
この選択が後の大惨事につながるなんて、その時は誰一人想像もしていなかったんだ・・・・・(「パン田一中年の事件簿」より)
店に入ると急いで注文。
父は特大ハンバーガー、母はデミグラスソースハンバーグ、そして子供三人でチーズハンバーグ1個と生クリームたっぷりのパンケーキ1皿を三等分。
案の定なかなか食の進まない長女、次女の口へ、フォークに刺したハンバーグを手首のスナップを効かせて次々とねじり込んでいく。
なんとかかんとか時間内に完食し、急いで保安検査を通過。
その後子供達を順番にトイレに連れてったり手土産を買ったり、あーだこーだしているともうギリギリの時間。
搭乗口に到着するとすでに機内への案内が始まっていた。
さて今回のフライト、予約が直前であったため座席指定ができない状態であった。
そのため当日の搭乗手続きの際、カウンターのお姉さんになるべく全員を近くの席にしてもらえるよう嘆願した結果、横一列(通路を挟んで2席×2)、その前列に1席というまずまずのポジションをゲットすることができたのだ。
しかしここにきて突如、パンダ組に緊張が走る。
誰が一人で座るの・・・・・・??
普通に考えたら・・・・・・オレ!?
ここで極端に淋しがリータな父は勝負に出た。
涙ながらにいかほど飛行機が嫌いであるか、いかに日中の仕事を一人孤独に頑張ってきたか、だからどうしても今子供達の隣に座りたいんだ、という面倒臭い理由をこねてこねてこねくり回し、なんとか後ろ四席の内の一席をゲット。
スマンね、嫁
世の中ゴネた者勝ちよね
だけどこの選択がまたさらに父を悲惨な結末へと導くことに、その時は当の本人ですら気づいていなかったんだ・・・・・(「パン田一中年の事件簿」より)
さて、無事機内まで辿り着いたパンダ組一同。
窓側から長女・長男、通路を挟んで父・次女の順に着席。
そして長男の前の席には嫁さんが腰を下ろす。
各々お気に入りの本やお菓子を手にリラックスモード。
嫁さんは時折チラチラとこちらを羨ましそうに振り返っている。
チッッ、女々しいヤツめ
席を譲ってもらった恩など忘却の彼方の父は、コアラのマーチを子供達の口に「あ~ん♡」しながらご満悦。
ちなみにその日は天候が悪く、分厚い雲の中を飛んでいる時間が長かったためかかなり揺れを感じるフライトであった。
とは言え所詮は所要時間一時間程度の小旅行。
あっという間に半分が過ぎ、そろそろ着陸に向けて高度を下げていく段階に。
その時、お気に入りの絵本を見ていた長女が突然「お腹が痛い」と。
もうちょっとで着陸だからさ、すこしだけ我慢できるよな?な??
言いながらも嫌な予感が。
ハンバーグ・・・・・・
コアラのマーチ・・・・・
絵本・・・・・・
揺れる飛行機・・・・・
もしや・・・・・・・・・!?
咄嗟に前席の背面に備え付けられている紙袋に手をかけた瞬間、
「ゴボッ」
おそるおそる横を見ると・・・
あ~~、ハンバーグがミンチ肉に戻っとる~~
時すでに遅し、吐物にまみれた長女が呆然とこちらを見つめているではないか。
ここからはもう脊髄反射の世界。
シートベルトを外すと通路をジャンプし長男の椅子へ。
「お前は父さんの席に座ってろ」と雑に長男を追い払うと手に持った紙袋を長女の口元に押し付ける。
幸い座席がほぼ最後列であったため、近くに座っているスッチーに「何か拭くものを!」と小声でお願いしつつ、前の座席を蹴って嫁さんにSOSを発信。
ここまでザッと10秒。
実は今まで乗り物酔いに関しては完全にノーマークだったのだ。
長男はおそらく大丈夫、次女は幼いためまだ不明、長女は・・・・ちょっと怪しいかな?って思うこともなくはなかったのだが、明らかな訴えが無かったから特に気にしていなかったのだ。
話を戻そう。
必死で口元に紙袋をあてがう私は非常に焦っていた。
スッチーがなかなか拭くものを持ってきてくれないのだ。
嫁さんがちっちゃいハンドタオルで拭こうとするのだが、ミンチ肉の量からして焼け石に水であることは明らか。
おいスッチー頼むよ早くしてくれよ!!!
心の中で絶叫する。
なぜなら父はよーく知っているから。
ハンバーグとかミートボールとかつくねとか、肉の種類を問わず挽肉系の料理はゲロが臭いという普遍的な真実を。
ゲップであんなに臭いのに、いわんやゲロをやってね。
ニオイによる二次被害だけは何とかここで食い止めねばならない。
さもないと他の乗客に多大なる迷惑をかけることになる。
そう決意した父は、ようやく手渡された大量のハンドペーパーを両手に広げ、半ば長女に覆いかぶさるように我が身を呈して飛び散ったミンチ肉と格闘。
と同時に自責の念に苛まれる父。
長女ごめんよ、もっと早うに気付いてやればよかったなぁ・・・
周りのみなさんゴメンなさい、やっぱニオイますわ・・・・・
そしてそして・・・・・
なんで一人で前の席に座らんかったんやろ・・・・オレ
いや、リバースした長女の世話を焼きたくなかったわけではない。
父親として喜んで我が子のゲロにまみれるくらいの度量は持ち合わせているつもりだ。
ただね・・・・・
実は父も乗り物には滅法弱いんよね・・・・・
しかもニオイだけでも十分酔えるっていうね・・・・
ま、最終的にアベック・リバースという笑えない結末だけは気力で回避したんだけどね。
着陸までなんとか持ち堪え、周囲の乗客とスッチーに平謝りしてほうほうの体で空港に降り立った時、父と母はすでに旅行最終日のような深い疲労感を全身に漂わせていた。
ゲロまみれの長女は、替えの服が預けている旅行鞄の中であったため、パンツの上から嫁さんのパーカーをワンピースのように着用。
これが大層気に入ったようで、さっきまで吐いてたことも忘れて嬉々としてガラスに映る姿を確認していた。
同じくゲロまみれになった父のスタイリッシュなアイスブルーのジーンズ。
ゲロを拭き取ってもしっかりとシミが残り、もはやケミカルウォッシュと呼ぶ方がふさわしい風合いに変貌を遂げていた。
異常な疲れを感じながら空港を後にし、近くでレンタカーを借りる。
普段なら子供たちはとっくに寝ている時間である。
最初から遅くなることはわかっていたため、その日は帰省はせず空港から30分程度の有名な温泉街に素泊まりの予定であった。
半分眠っている子供達と旅行鞄を車に放り込み、さあ最後の一仕事、と気合を入れ直して温泉街に向けて出発。
だけどその時、僕たちはこの惨劇がまだ終幕を迎えていないことにまったく気が付いていなかったんだ・・・・・・(「パン田一中年の事件簿」より)
後半に続く
後半に続く予定だったんですが、飽きたのでやめます。
旅行の全行程を書くつもりだったんですが、行きの、しかも飛行機ネタだけで3000文字も使ってしまったという事実にすべてのやる気が失せました。
小さなお子さんを持つ親御さん、乗り物酔いは4、5歳くらいで顕在化するようなのでご注意ください。
間違っても直前にハンバーグだけはやめておきましょう。