つい先日、ひょんなことから母校のホームページを見る機会があった。
工学部のホームページ。
今となってはこの分野と全く関係のない世界で生きているわけだが、久しぶりに過去を思い返して少しばかり感慨に耽ってしまった。
実は私、再受験生。
医学部に入る前に工学部を出ている。
なにを血迷ったか大学院まで覗き見してる、中退だけど。
そこら辺の経緯は過去に「再受験編」で書いたから省略。
今回は私が見た工学部と医学部をつらつら書いてみようと思う。
あくまで私見だけど。
将来の選択に迷っている方の一助にでもなればと。
今日は真面目にやってみる。
受験対象としての工学部と医学部
一昔前の話だから現状に即していないかもしれないけど、両方受けた印象としては少しばかり医学部の方が厄介。
何が厄介って、基本的にミスが許されない。
全教科万遍なく、取りこぼしは厳禁。
受験難易度を偏差値で表記する場合が多いが、医学部受験には一種独特な(偏差値には表れていない)イヤらしさがあるように思う。
そういった独特の雰囲気は、年数を経るごとに受験生に重くのしかかる。
だからできれば現役や一浪の(勢いがある)うちに乗り切ってしまうのがベスト。
不運にも多浪となってしまった場合はもはや、その雰囲気に飲み込まれないよう精神力を鍛えまくるしかない。
というか勉強するしかない。
対して工学部。
受験する大学ごとに微妙に特色が違うだろうが、基本的には数学物理(学科によっては化学)が得意でないとキツい。
私の場合、もとがガッチガチの文系人間(得意科目は国語と英語、苦手科目はそれ以外すべて)だったから本当にキツかった。
なに血迷って理系選んでんだよ・・・って何度自分を呪ったことか。
だけど工学部の場合、センター試験(死語?)で多少コケたって挽回可能なのもまた事実。
だから決して最後まで諦めてはいけない。
恥を忍んで実例を晒そう。
何を隠そうこの私、あろうことかセンター試験で数学ⅠとⅡの合計が5割、というとんでもない点数を叩き出している。
センター本番の緊張とか浪人のプレッシャーとか色々あってね、もうあり得ないミスの連発。
ま、それでさすがに医学部受験は諦めたんだけど、せっかく理系でやってきたんだからどうせならどっかの工学部でも受けてやろうって考えたわけだ。
至って不純な動機。
そして結論から言えば、一つくらい大きくコケても何とかなってしまった。
どうせ勝てる勝負選んだんでしょって思われるかもしれない。
だけど当時の私、努力は嫌いだけどガッツだけはあったのだ。
しかもチキンハートのくせに向こう見ず、みたいな面倒臭いタイプ。
数学5割だからってナメてんじゃねーよとばかりに、いわゆる七つの大学の一つに特攻してやった。
それでも何とかなったんだから、諦めなければワンチャンスあるのが工学部だ。
入学してからの工学部と医学部
両方とも理系学部だから、出席も厳しめだしタスクも多い。
医学部はそれに加えて実習が頻回、特に解剖実習なんかは御遺体を使わせて頂くという特殊な事情もあり、生半可な態度で臨むと即留年を喰らう。
どっちも厳しいけど、総じて考えると工学部の方がサボりやすい印象。
実際結構サボったし。
お次は部活。
工学部の部活動は基本的に全学部共通のため、部活を通じて様々な学部の人達と交流を持つことが可能だ。
しかしなぜか医学部の部活動は医学部内で完結している。
大会も「西医体」や「東医体」と呼ばれる、西日本と東日本の医学部に分かれて行われる大会が主流。
というわけで医学部の部活はあまり世界が広がらない。
むしろ、定期試験対策として先輩から過去問を譲り受けるためにどこかの部活に入る、という意味合いの方が強いのかもしれない。
とは言え中には本気で部活に励んでる人も結構いるし、少数派ではあるが医学部内の部活ではなく、全学共通の部活に入部する猛者もいる。
工学部は4回生になると研究室に配属される(少なくとも私の大学では)。
そうなると、四六時中顔を突き合わせるのは同じ学科のクラスメイトでは無くて同じ研究室の人間、ということになる。
もしも大学院に進学することになれば、そこからさらに二年間同じ釜の飯を食うわけだ。
よって工学部では、どちらかというと研究室仲間との関係が後々まで続く場合が多い。
対して医学部の場合、5回生になれば病院実習が始まるため、最後の二年間はポリクリ班と呼ばれる6人前後の小グループに分かれて行動することになる。
なので当然ポリクリ班の絆は深くなるわけだが、そもそも医学部は学科の人数が少ない。
さらに、入学後4年間という比較的長期に渡ってクラス全員で行動する機会が多いということもあり、ポリクリ班に限定されない交友関係が最後まで続くという印象が強い。
学問としての工学部と医学部
工学部は理系分野(数学、物理、(化学))が好き、または得意でないとツラい。
私は数学も物理も鳥肌が立つくらいに嫌いだったから、正直ずっと居心地の悪さを感じていた。
周りは数学が大好物な変態連中ばかりで、私以外の皆が天才に見えたものだ。
小難しい数式を見た時、私にはそれが数字の羅列にしか見えない。
だけど周りの数学が大好物な変態連中は、私が数字の羅列としてしか見ていない数式をおそらく言語のように捉えていたんだと思う。
まるで小説でも楽しむかのように、興奮しながら数式という文章を読む
変態やねきっと見えてた世界が違うんだろうね。
とにかく工学部は数学物理に強くなければ(好きでなければ)本当にキツいと思う。
もちろん学科にもよるけど。
反対に、医学部においては理系のスキルはほぼ不要と言っても過言ではない。
医学部において要求されるのは圧倒的国語力。
膨大な情報の中から必要な知識をインプットするための読解力と記憶力、それを論理的に解釈してアウトプットするための表現力、これらが必須のスキルである。
なぜ医学部が文系に対する門戸をもっと広げないのか、本気で理解に苦しむところだ。
文系人間の私にとって、そういう意味で医学部は理想的な環境だった。
正直なところ、勉強が辛いと思ったことはほとんどない。
むしろ楽しかったし、もっともっと学びたかった。
結果、六年間で無遅刻無欠席の皆勤賞だ。
人って変わるもんだね。
卒業してからの工学部と医学部
先ほど理数系が得意でないと工学部はツラいと書いたが、それでは文系頭が頑張って工学部を目指すのは無謀なのか。
卒業してそのまま工学の世界で生きていくのなら、やっぱりツラいかもしれない。
だけど工学部は潰しが効く学部。
実際に私の周りにも同じく居心地の悪さを感じていた連中は少なからずいたようで、彼らは銀行に就職したり家業を継いだり、はたまたテレビ局に就職した者もいる。
数学なんて一切関係なし。
このように就職先のバラエティに富む、という意味では工学部はお勧め。
やってみて合わないと思ったら、思い切って違う業界へ飛び出してしまえばいい。
根っからの理系でなくても将来の選択肢を広げるために工学部へと進む価値はあると思う。
逆に医学部は、もはや医者になる以外に選択肢がない。
そもそもが専門学校みたいなもんだから。
もちろん医師免許を持った上で違う職業に就く人もいるが、それはかなりの少数派。
よって医学という学問に興味がなければ安易に選択すべき学部ではないと思う。
もちろんそれは全学部に共通することなんだけど、特に医学部は切ったり貼ったり血を見たりと、嫌な人には苦痛でしかない実技もある程度要求される。
学問として医学に興味が無ければ居心地の悪さがハンパない。
職業としての安定性を得たいという安易な動機だけで医学部を選択すると、何度も留年の憂き目に会い最終的に退学、なんてこともよくある話。
実際に親が医者だから、という理由だけでイヤイヤ入学してすぐに自主退学した人もいたし。
ま、色々書いたけど。
実際のとこ18歳やそこらで自分に合った学部なんて選べるワケないわな。
何を選んでもやりがいはあるだろうし、何を選んでも後悔するかもしれない。
大切なのはたくさんの人の意見を聞きながら、だけど最後は誰の意見も聞かずに自分だけの意志で決めるってことだと思う。
間違ったと思ったらいつでも引き返せばいいんだからさ。
その先に待ってるのは茨の道かもしれんけど。
色々あるけど、それが人生。
だから、どんな状況でも乗り越えていけるメンタルが必要不可欠。
父が子供たちに獲得してほしいと願うスキルはそれだけだ。