この名前ですぐにピンときたあなた、なかなかお好きですな
昨年頃から家族で山登りをするようになった
もともと山に登るのは好きな方だったけど、子供が立て続けに三人生まれたから行くに行けなかったのだ
時間的にも子供の体力的にも
だけどコロナで行き場を失ってしまったもんだから、なんとか人気のない場所でガス抜きさせてやらねばってことで県内の山に登ってみたのだ
丁度一年くらい前の話
標高は800m台、往復4時間程度の山
当時小学二年の長男は大丈夫として、一年生の長女と年中組の次女にはちと厳しいだろうな~って思ってたんだけど
蓋を開けてみたら驚くほどサクサクと登っちゃって
父の目の前で丸っこいお尻をプリプリ振りながら登っていく姿に痛く感動したもんだ
あれから約一年の間
同じ山系でルートを変えて登ること6,7回
みんな随分と健脚になってきた
そして今回
一度行ってみたかった山
同じ山系に属するのだが、途中の峠からルートが分かれてかなりの急登をロープを使ったりなんかしてよじ登らないといけない
標高は700m台で大したことないんだけど
さすがに下の娘二人は無理かな、なんて敬遠してたのだが、今回なんだかいけそうな予感がビンビンしたから行ってみることにした
無理なら途中で引き返したらいいだけだし
登山口から分岐のある峠まで40分
そこから意を決して目的の山へ向かう
手書きの案内板がなければ見落としてしまいそうな脇道に入る
比較的登りやすいなだらかな道を歩くこと20分
唐突に勾配が急峻になる
写真では分かりづらいが、まずまずの勾配
こういうロープ場が次々に現れる
歩きなれた大人ならまだしも、子供にはやや厳しい急登だ
父を先頭に年齢順に隊列を組んで登っていく
ロープの使い方は怪しげだけど、これならなんとか頂上まで登れそう
特に長女がかなり安定した足取りで危なげなくロープ場を登って行くのは嬉しい誤算だった
長男はまったくもって余裕だから、次女さえケアすれば何とかなる
途中何度か「ふぁいとぉ~~~!!いっっぱあぁぁぁつ!!!」の掛け声と共に次女を引っ張り上げながら登ること一時間
ついに頂上まで辿りついた
頂上なんもねえ・・・
見晴らしもクソもねえ・・・
小っちゃい標識がポツンと立ってるだけ
だけどそんなことどうでもよくなるくらいに達成感でいっぱいのパンダ組一同
この山が登れたってことは、今後のレパートリーが格段に増えるってことだ
清々しい気持ちで昼飯のオニギリを頬張ってたら、反対側から登ってきた60代くらいの夫婦に声をかけられた
頂上から子供の声が聞こえてきて驚いたと
この山で子供の声が聞こえるなんて初めてのことだったらしい
しかもこんなに小さい子供たちだったなんて、なおさらビックリしたと
それを聞いて喜色満面の子供たち
俄然やる気が出てしまったらしく、そのまま同ルートで下山するんじゃなくて老夫婦が登ってきた反対側のルートに行ってみたいと
夫妻から話を聞くとかなりの遠回りにはなるものの、そのルートでも最終的に分岐点がある峠まで戻ってこれるらしい
仕方ない
せっかくやる気になった子供たちの気を削ぐわけにもいかない
あ~あ
せっかくあと一時間半で下山できると思ったのに
とりあえず頂上で記念撮影
ホントに見晴らしもクソもない頂上
だけど登り切ったという自信をもらえただけで、子供たちにとっての価値はプライスレス
その後、奥深い山中をクネクネと歩き回ること合計5時間
途中の沢で遊んだり山寺で休憩したり
おそらく10㎞近い行程だったと思うけど、無事下山できたことに感謝
子供達に聞いたら「また行きた~い!すぐ行きた~い!!」だって
少し休ませてくれ・・・・
最後にチョコッとだけ登山家のご紹介
と言っても私、別に登山に詳しいわけでもなんでもないんだけど
you tubeでぼんやり見てるのが好きなだけ
まずは山野井泰史さん
御存知の方も多いだろう
この人は世界的にもトップレベルのクライマーなんだけど、とにかく純粋にぶっ飛んでる
スポンサーに媚を売ることなく、非正規雇用で資金を稼いでは一人黙々と登山を続けるアルピニストだ(奥さんも登山家で、奥さんとは一緒に登っている)
詳しくはウィキペディアなんかに載ってるから割愛するけど、「ギャチュン・カン北壁」の登攀エピソードだけはご紹介したい
2002年に奥さん(妙子さん)と共にヒマラヤのギャチュン・カン北壁に挑んた時のこと
途中で体調を壊した妙子さんが山頂直下で待機する中単独登頂に成功、再び奥さんと合流して壁を下降中に7000m付近で雪崩に遭遇する
これにより奥さんが50m程度滑落、ロープにぶら下がる形となる
奥さんを救出に向かおうとする山野井さんだが、本人も雪崩の衝撃で目が見えなくなっていることに気付く
ここからが凄い
安全を確保するためには岩の隙間にハーケン(釘のようなもの)を打ち込みながら下降する必要があるのだが、目が見えなくて岩の形状が分からない
そこで彼は極寒の中防寒手袋を外し、失ってもいい重要度の低い指、すなわち左の小指、右の小指、左の薬指・・・と一本ずつ犠牲にしながら、岩肌の感触を確かめてハーケンを打ち込んでいったのだ
しばらくして指が凍ってしまったら次の指、それも凍ったらまた次の指・・・・
このようにして一本のハーケンを打ち込むのに約1時間という途方もない作業を冷静にこなし、最終的に奥さんを救出してベースキャンプまで戻ってきたという
結果、この登山で山野井さんは手足の指を合計10本、奥さんに至っては全ての指を第一関節から切断することになる・・・・
と、こう書いたら暗くなってしまうところだけど、当の本人たちの達観ぶりが凄い(もちろん過程では葛藤もあっただろうけど)
山野井さんなんか、残った指を見て「3本だけ長いからそれに頼っちゃう、全部切っちゃいたいくらい」とか物騒なことを平然と言ってるしね
妻の妙子さんも凄い
残った指の関節を使って懸垂とかボルタリングの練習をやったり家庭菜園で野菜作ったり晩御飯の用意したり
全部普通にこなしてる
悲壮感がない
普段は山の中で自給自足に近い生活をしながらお金を節約し、溜まったお金は全て大好きな山に投入する
指をなくしてパフォーマンスが落ちてしまったとしても、その時々の自分達にできるであろう最高の登山の目標を立て、それに対して挑戦を続けていく
何かが好き、っていうことの究極がきっとこういう形なんだろうな
どうやったらこんなに没頭できるんだろう
いずれにせよ、人生においてここまでのめり込めるものがある人って幸せそうな顔をしてる
最後に山野井さんの名言をご紹介
「登山を知ってからずっと、冷静な発狂状態にある」
(ギャチュン・カンを振り返って)
「あのときのことは今でも「いい登山ができたな」と思ってるんです」
「山というのは仰ぎ見るものであって、上から見ちゃいけないんじゃないかってつい思ってしまいます。・・・山もドローンで上から撮ると・・・・ちょっと山に失礼な感じがする(笑)」
「登山家は、山で死んではいけないような風潮があるが、山で死んでもよい人間もいる。そのうちの一人が、多分、僕だと思う。これは、僕に許された最高の贅沢かもしれない」
最後のやつなんてもう私みたいな凡人には何言っちゃってるのかよくわからんのだけど、それでもつくづく凄い人だなって思う
子供達には安全な登山を楽しんでもらいたいけどね
あっ、服部さん
服部文祥さんのことも書くつもりだったけど、もはや気力が尽きてしまった・・・・
この人の登山は非常に哲学的
興味のある方は是非ググってみてね
ハイ、おしまい