息子と喧嘩した。
確かに父は親子空手だ。
成人部でバリバリやってるワケじゃない。
それでも一生懸命やってんだよ。
私が空手を始めようと思った理由。
世の中痛ましいニュースで溢れている。
半分他人事だけど、いつ我が身に降りかかってきたとしてもおかしくはない。
いざ自分達が頭のおかしなヤツに襲われた時。
普段から何もしてなければ多分何もできない。
全力で逃げればいいんだろうけど、自分より大事なものを背負ってたらそうはいかない。
1分でも2分でも時間を稼げたら子供たちだけでも逃げ切れるかもしれない。
あわよくば警察が駆けつける時間を作れるかもしれない。
そのわずかな時間を稼げるっのってものすごく大事じゃないか?
だから父は空手を始めることにしたんだ。
一人じゃ寂しいからオマエ達を巻き込んだんだ。
基本的に親子空手って型の稽古がメインだ。
実際に蹴ったり蹴られたりってのは、万が一怪我でもしたら大問題だからってことで積極的にはやらない方針だ、ウチの道場は。
当然一緒に来てる父兄の方も「蹴り合いしましょうよ」なんて言わない。
だけど父は先生に「蹴ってください」って頭を下げてお願いしてる。
最近は「腹も殴ってください」って。
2年近く空手を習って気付いたからな。
本当に必要なのは超強力な必殺技なんかじゃない。
鉄壁のディフェンスだ。
ま、そもそもカチカチのブリキ人形みたいな父に華やかな回し蹴りなんて期待されてもアレなんだけどな。
だけど防御なら何とかなる。
蹴られて蹴られて蹴られまくってたら、いつかは先生みたく「全身ゴムタイヤですか?」ってな体にちょっとは近づける気がするもん。
前回ブログで筋トレに勤しんでるって嬉しそうに筋肉の写真載っけてたけど、それだってこの一環だ。
痛みに耐えたら耐えた分だけ打たれ強い体になっていく。
なんともわかりやすい世界だろ?
そんな積極的な姿勢がツボにハマったのかなんなのか、フルコン空手六段の超ムキムキな師範が大層嬉しそうに熱血指導を施してくださるようになった。
毎回毎回、床にうずくまるまで。
「成人部でも、アスリートクラス(バンバン試合に出るムキムキ集団)じゃないとこんなに蹴ったり殴ったりしてませんよ~」
なんてウキウキしながら言われるくらいに。
「○○さん、こんなに蹴られて何を目指してるんですか??どうせなら是非アスリートクラスに顔出してみて下さいよ~」
・・・・いや、それは結構です
それなのに。
息子の空手友達が家に遊びに来たとき。
「お父さん、黒帯の人たちに蹴られてヒーヒー泣いてるやん」って言いやがって。
その時は父さん、「ははは」って笑って流したけど。
晩御飯の時、酒飲んでほろ酔いになったらなんかその言葉がフラッシュバックしてきて。
頭にカッと血が上ったわけだ。
瞬間湯沸かし器がボタンも押してないのにいきなり沸騰したみたいでオマエもビビったろうけど。
「おい長男、父さん蹴られてヒーヒー泣いてるわけじゃないぞ!!」
唐突にキレはじめる父。
「大体おまえ、サッカーにしろ空手にしろ上手くなりたいだとか強くなりたいだとか
口で言うのは簡単だけど、おまえはそのために何か努力努してんのか?
そうなるように目標もって練習してんのか??
お父さんはな、ちょっとでも打たれ強い体になるために毎回毎回先生に蹴ってもらってんだよ
一生懸命やってる人を馬鹿にしてんじゃねーよこのクソガキが!」
ま、大分言い過ぎたけどね。
唐突にキレ始めた父に呆然となる長男。
「・・・・・ゴメンなさい」
反省する息子を見て少しだけ理性を取り戻した。
だけどこれだけは伝えておきたかったんだ。
「わかったならいいよ
だけど父さんがどんな思いで毎回毎回先生の棍棒みたいな足で蹴られまくってるのか、その本意だけはわかっておいてくれ
それとな
父さんは決してヒーヒー泣いたりしてないぞ、それだけは肝に銘じておけ
床にうずくまってしばらく立ち上がれないけど決してヒーヒー言ってない
どっちかっていうとハーハー言ってる
・・・・いや違う
はあぁぁ、はあぁぁぁぁーーーんって感じかな
父さんな、気付いたんだよ
蹴られるのって悪くない
あの痛み、逆に心地いいんだ
むしろ練習後に張りと痛みが残ってないとなんか罪悪感に苛まれるもん」
先に断っておくが、私は決して変態ではない。
MではなくS寄り。
だけど蹴られるのを耐えるのってなんかクセになるんだわ。
上級者がお互いに蹴り合ってる時にドギツイのをもらって「痛ってーー」って言う時の顔、間違いなく嬉しそうだから。
特殊な世界やね。
最近腹も殴ってもらうようにしてるって書いたけど。
初めて殴ってもらった時、横で型の稽古しながらこっちを見てた嫁さんに家に帰ってから言われてしまった。
さすが嫁さん、オレのことよくわかってるわ。
「あなた・・・・・また新しい扉開かれちゃったわね」
「足の痛みとはまた全然違うくて・・・・・・・アリだった」
うん、やっぱ変態やね♡