少し前に我がパンダ組の原点、「パンダ公園」を記事にしたことがありました。
本日はその「パンダ公園」で出会った不思議な少女、彼女との束の間の心の交流を書いてみたいと思います。
読み終わったあと、きっとあなたの胸の中を爽やかな一陣の風が吹き抜けることでしょう。
話は一年以上も昔に遡ります。
その頃、私達はしばしばパンダ公園に足を運んでいました。
なぜならパンダ公園にはほとんど人がいないからです。
たぶんウンコがいっぱい落ちてるからだと思います。
置かれてる動物たちの目がなんとなく怖いからかもしれません。
とにかく人がいないのです。
さて、ある休日のこと。
久々に飼っている犬を思いっきり走らせてやろうということで、昼過ぎからパンダ公園に出かけました。
すると隣接する駐車場に一台の車が停まっていました。
もしやと思い公園の中を覗くと、すでに一組の家族がすべり台で遊んでいるのが目に入りました。
正直ちょっとだけイラつきましたね。
俺たちの公園なのに、と。
小学生のような発想です。
けど先客がいるならば仕方ありません。
犬を走らせるのは諦めて、子供たちだけ連れて公園の中に入りました。
チラリとすべり台の方に目をやると、小さな女の子と母親が楽しそうに遊んでいました。
少し離れた場所で父親と思しき男性がタバコを吸っていました。
そのすべり台はただ単に階段を上って滑り降りるだけの鉄組みタイプではありません。
大きなコンクリートの塊で、ちょっとしたクライミング用の凸凹やトンネルまで付いてる立派なやつです。
このすべり台はパンダ公園の目玉的遊具なわけです。
だから子供達三人は先客がいるのも構わずにそのすべり台目がけて走っていきました。
いきなり知らない子が三人も、しかも中には自分より大きな子も混じってるわけです。
きっとその女の子は圧倒的雰囲気に飲み込まれ、スゴスゴとすべり台をあけ渡すに違いありません。
おうおう可哀そうに・・・・
多勢に無勢、ですか
ま、これが世の常です
諦めなさい
ほんとに卑しい人間ですよ、私は。
書いてて吐き気がする。
だけど実際にはそうはならなかったんです。
キャッキャ言いながらすべり台で遊ぶ三人の我が子、それに混じってその女の子もキャッキャ言いながら走り回ってるわけです。
秒単位で適応してましたね、彼女。
一緒に遊んでる、というよりは勝手に後ろをついて回ってる、という感じ。
嫁さんが女の子の母親に「すいませんね」みたいな社交辞令でジャブを入れました。
するとその方も「いえいえ、こちらこそ遊んでいただいて」みたいな社交辞令で応じます。
しばらく社交辞令の応酬が続き、その後軽い自己紹介的な内容に発展したようです。
私は横で子供たちを見ながら聞くともなく聞いていました。
イントネーションは完全な標準語。
関東の方から仕事でこちらに来ている様子。
どうやらこの公園は初めて立ち寄ったとのこと。
そしてその女の子は三歳らしい。
・・・えっ三歳?
デカくないこの子??
ウチの長女(当時五歳)より余裕で大きいじゃないのよ
三歳と言えば、次女がその時ちょうど三歳になりたてくらい。
遠くで見てると小学生と保育園児くらいの差がありました。
しかも彼女、標準語でスラスラと流暢にしゃべるのです。
次女なんて当時まだ舌たらずで三語文がやっとというレベルだったのに。
とにかく同じ三歳とは思えないほど大きく、言葉が達者で、かつ物怖じしない女の子でした。
むしろ多勢であるはずの我が子たちがタジタジしてて、遠目にも滑稽でした。
しばらくして長男がサッカーボールで遊び始めると、「なにそれ、サッカーボール?〇〇ちゃんも一緒にサッカーしたーい」と言って長男にピッタリ寄り添います。
「お、おう・・・・」
当時6歳くらいの長男、どうしていいかわからずにボールを持ったまま突っ立っていました。
その手からボールを奪うと、「お兄ちゃん、は~い」とか言いながら長男に向けてボールを蹴ってました。
もはやどちらが年上かわかりません。
その頃、ケタ違いに人見知りの長女は女の子から漂う香ばしい匂いにイチ早く気が付いたようで、一人そそくさと離れたジャングルジムに避難していました。
長女はグイグイ来られると萎縮してしまうタイプなのです。
さて、その時次女はと言えば・・・・まだすべり台で遊んでました。
不運なことに一人で黙々と。
そこへ長男とのサッカーに飽きた彼女がやってきました。
すべり台の頂上に座っている次女を見つけると、おもむろに隣へ腰掛けます。
そして流暢な標準語で次から次へと質問をぶつけ始めました。
「ねえねえ、どこからきたの?」
「・・・・・・・・・・」
「この公園よく来るの?」
「・・・・・・・・・・」
「いまいくつなの?」
「・・・・・・・・・・」
私は気付いていました。
次女が極度に緊張していることに。
なぜなら次女の顔、半笑いで下アゴが突き出てたから。
次女は緊張すると下アゴが出るんです。
そしてなぜかニヤつくんです。
だからすかさず助け船をだしました。
「次女、いくつって聞かれてるぞ?何歳やったっけ??」
父に背中を押された次女は渋々といった体で指を三本突き出しました。
「えっ、三歳なの??〇〇ちゃんと同じじゃーん!!」
「・・・・・・・・・・」
「ねえねえじゃーさー、どんなテレビ見てる?」
「幼稚園でお友達たくさんできた??」
「なわとび何回とべる???」
この頃になると次女はもう考えることすら放棄。
女の子ももはや返事は期待していないようです。
しかし話し相手ができたのが嬉しかったのか、質問攻撃の手は緩めません。
「ねえねえじゃーさー・・・・・どんな食べ物が好き??」
この瞬間、ずっと俯いてニヤニヤしていた次女の目に光が宿ったのを私は見逃しませんでした。
次女・・・・・いけるんか!?
心の中で叫びました。
すると今までずっと黙っていた次女が初めて、突き出した下アゴをもぞもぞ動かして声を発したのです。
小さな声でしたが、ハッキリと聞き取れました。
「・・・・・ハナクソ」
すべり台の向こう側にいた女の子のお母さんが「ぶっ」って言いました。
見ると、両手を口に当ててフルフルしてました。
そして耐えきれなくなったのか、公園の隅でタバコをふかしてる父親と思しき男性の元に駆け寄り、事の顛末を克明に報告して爆笑してました。
笑いたければ笑えよ
次女よ・・・・・・・
父さんにはよーくわかる
よく知らない子に流暢に話しかけられて緊張したんだろ?
それに標準語だったからあんまり意味がわからなかったんだろ?
しかも質問が速すぎて答えるタイミングが掴みづらかったんだろ?
だけど最後、好きな食べ物だけはちゃんと聞こえた
だからしっかりと答えることができた
でも不思議だな・・・・・・なんでハナクソって言ったの?
・・・・・そっか!プライドだな?
舐められたらイカンと思ったんだな?
関西人はボケてなんぼだって
うんうん、結局お前の思惑通りになったよ
あの子は唖然としてたけどお母さんは完全にグロッキーだったよ
次女よ・・・・・・
お前は勝ったんだ!!
いかがでしたか?
不思議な女の子と心を通わせたお話。
あなたの胸に一陣の風は吹き抜けたでしょうか。
うん、今の話忘れてください。